治療器具各種〜もぐさ(お灸)
こちらでは当院で使うもぐさ(お灸)を紹介します。
「もぐさ」とはお灸につかう材料でよもぎの葉の裏面の柔毛を取り出したものです。
もぐさの種類とはその生成過程における柔毛の純度の度合いのことで、等級の高い物ほど夾雑物の少ない純度の高いもぐさになります。
もぐさの等級の差はお茶などの等級とは違い、燃焼する時間の違いを表しています。
純度が高ければそれだけふわっと軽く燃え尽き、夾雑物が多くなればそれだけ燃焼に時間がかかり、じっくり燃えるので熱を長時間持続させる事ができます。
この特性から、最も純度の高い最上級の物は、ゴマ粒程度の大きさに丸めて皮膚に直接行うお灸に用います。
等級の下がる夾雑物のまざった物は、その燃焼時間の長さを必要とする、灸頭鍼・温灸・知熱灸などの特殊なお灸の時に用いています。
他に、煙と臭いのほとんど出ない炭化もぐさなどを用います。
▼お灸各種
当院で使用するお灸各種です。
ライター側から点灸(半米粒大)、点灸(米粒大)、ダルマ灸(マイルド)、灸頭鍼用炭化もぐさです。
中段の大きなもぐさの固まりは知熱灸です。
下段のタバコのようなものは棒状にもぐさを固めた棒灸です。
▼点灸
皮膚上で直接点火する最も一般的なお灸です。
サイズはライターと比較していただけるとよくお解りいただけると思いますが、米粒大という表現をするものの、その実はゴマ粒大程度の大きさです。
←点灸に点火する様子です。
皮膚上に見える黒い点は灸点につけた墨です。
このように皮膚上に立て、線香の火で点火します。
←点灸を終えた痕の灸痕です。これで5壮すえた痕です。ライターや体毛と比較して小さな点であることがお解りいただけるでしょうか。
▼灸頭鍼
皮膚に刺した鍼の頭に、もぐさを乗せて点火する特殊鍼法です。
以前は無煙・無臭の炭化もぐさを利用して行っていましたが、現在は燃焼時間の長い普通のもぐさを使って行っています。
主に腰や肩関節周辺で行うことが多いです。
直接皮膚を焼くわけではなく、輻射熱と鍼からの熱伝導で深部を温めるものなので、非常に気持ちが良いお灸の一つです。
▼知熱灸
点灸よりも燃焼時間の長いもぐさを、三角錐状に硬く固めて使用します。
親指の指頭大ほどの大きさがありますので、怖く感じるかも知れませんが、熱を感じた段階で皮膚から取り除きますので、火傷を負うことはありません。
左は知熱灸を行っている写真です。
左が点火直後ですが、数十秒後に熱を感じた段階が右の状態です。
皮膚との間にまだ燃焼していないもぐさが残っていることがお解りいただけると思います。
熱の感じ方は個人差がありますが、皮膚上を焼いてしまうまで熱を感じないということはありません(麻痺がある場合は感じない事もありますが、麻痺の疑いがある場合は行いません。)
▼棒灸
もぐさを棒状に固めたものをタバコのように先端を燃やして患部を照らすようにして温めるお灸です。
知熱灸のように、熱さを感じるまで一箇所を温め、熱さを感じたところで次のポイントへずらすというような施術の仕方をします。
当院では、主に、腰、背中、腹、足の指先、頭などに使うことがあります。
写真でも分かるように、術者の手がゲージになって常に皮膚とお灸との距離をとっているので、燃えている先端部が皮膚に付くことは在りません。
▼ダルマ灸(マイルド)
業務用ですが「せんねん灸」などに近い市販品のお灸です。
紙筒の底面に糊がついているので、それをしめらせて肌に張り付けます。
構造は概念図の通りで、皮膚に直接もぐさがあたらないので、痕が残りにくいお灸です
当院では点灸よりも柔らかく持続させて熱刺激を与えたいときに使っています。ですから、熱の強さももっとも緩いマイルドタイプを使っています。
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左はダルマ灸を行った後の皮膚の写真です。
上の丸い痕が見えるものは、燃焼後に皮膚に付着した「ヤニ」で、酒精綿でふき取った後が下の写真です。
うっすらと皮膚が赤みをおびているものの、火傷痕のような物は一切残っていないことがお解りいただけると思います。
▼塩灸
厚さ1cm程の塩の台の上でもぐさを燃やして熱を伝えるお灸です。
直径4cm程度の紙の筒にガーゼをかぶせてお塩を盛って土台を作り、その上でもぐさを燃やします。
写真は、へその穴にこのお灸をしているところです。
腰や背中、お腹など冷えが強い方で、じっくりと温めたいときに使います。また、塩は自在に動きますので、土台の形が変形するので、へその穴やまぶた・耳などにも応用できます。
←ガーゼに盛った塩の土台ともぐさ。
塩は天然塩を使っています。もぐさは温灸用の燃焼時間が長い物を使います。
塩灸
左の模式図の通り、皮膚面ともぐさの間に塩の土台が入るので、大きなもぐさを使いますが皮膚は直接焼かれない為に、じわっと心地よい暖かさが伝わります。
へその塩灸
へその様に窪んだ場所へする場合には、左図の通り土台が変形してお灸をする場所にフィットします。
このことから、眼球(まぶた)の上や、耳の穴などにも応用できます。
なお、へそは胃腸虚弱や夏バテなどに、まぶたは眼精疲労に、耳は耳鳴り等に効果が期待できます。