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本町北はり灸院の鍼灸治療の概要
こちらでは当院で行う治療について簡単に説明します。
お腹を診て、冷えを取る
当院では「積聚治療(しゃくじゅちりょう)」と言う東洋医学的な伝統鍼灸を基本におこなっています。
治療方針のページでもご説明していますが、積聚治療(しゃくじゅちりょう)では、肩こり・腰痛・頭痛・生理痛・冷え症・不眠など種々のつらい症状を引き起こす根元的な原因を東洋医学的な「冷え」であると考えます。
冷えが強くなると・・・
図・「冷え」は色々な症状になって身体に現れてくる。
頭痛:冷えが強くなると熱気が頭に上って頭痛を起こしやすくなる。
のぼせ:冷えが強くなると熱気が頭・顔に上ってのぼせる。
肩こり:冷えが強くなると熱気が首や肩に上って硬く緊張させる。
不眠:冷えが強くなると熱気・活動力のコントロールが乱れて寝付き難くなったり、深く眠れなくなる。
動悸:冷えが強くなると熱気が胸に突き上がって動悸を起こす。
生理痛:月経で熱が失われると冷えてお腹や腰が痛み出す。
むくみ:冷えが強くなると体液を正常に循環させる力が弱くなり、水が溜まってむくむ。さらに溜まった水が身体を冷やして悪循環になる。
冷え症:冷えが強くなると末端まで熱が巡らなくなり手足が冷える。
全身的な冷えが強くなると「上半身に熱が溜まり下半身が強く冷える」あるいは「内側が冷えて外側が熱を持つ(アトピー性皮膚炎等)」。他にも色々な症状が出る。
※注意:これらは東洋医学的な陰陽観に基づく考え方であり、現代医学的な病理を説明したものではありません。
東洋医学は、この世のあらゆる物が「気」によって成り立つとする「気の概念」から生まれた医学ですので、人体は「気」によって形作られると考え、病気も「気」の状態の異常によって起こると考えます。
積聚治療も、東洋医学的な鍼灸治療ですので、人体を含むあらゆる事象を「気の概念」でとらえて(「気の考え方」で解釈して)治療を行います。
さて、「積聚(しゃくじゅ)」とは聞き慣れない言葉ですが、これは『難経(なんぎょう)』という中国の古典に書かれている「お腹の異常」を指す言葉で、具体的には痛い・硬い・気持ち悪い・脈を打っている・冷たいなどの異常を現します。
東洋医学の診察では、主に脈や舌・お腹などを診て、患者さんの身体の気の偏りを調べますが、積聚治療ではお腹に現れる積聚の状態を全身的な気の異常を現すものとして注目し、診断・治療を行います。
病は、気の概念においては冷え(元気の消耗)が生じることによって、気が偏った結果、身体に生じた異常と考えます。
したがって、冷えを解消すれば、「気」の偏りが自然に調整され、種々の辛い症状も改善されると考えます。
このように積聚治療では、全ての病を「冷え(元気の消耗)」がもたらす身体の異常としてとらえ、冷えをとることを目標に、主に脈やお腹の状態から冷えの深さや気の偏りをとらえて治療を進めて行きます。
身体全体のゆがみ・偏りを、芯から改善してゆく治療法ですので、腰痛・肩こり・冷え性・便秘・生理痛・不眠など複数の症状が絡み合っていて、各々の治療を別々に行ってもあまり良くならなかったという方や、不眠や自律神経失調症状がなかなか緩解されないような慢性的な症状をお持ちの方におすすめの治療法です。
ただし、全身の調整を行って症状の改善を目指す治療法なので、治療が長期化することが多くなってしまうのが難点です。
じっくり養生に専念できる方は効果が出るのも早いですが、仕事で身体に無理をさせながらの治療という場合には、特に根気よく治療を続ける必要があります。
背中に鍼灸をして、冷えを解消
主にお腹に現れる「積聚(しゃくじゅ)」(「痛み」や「硬さ」「拍動」などの異常感覚)の度合いを調べ、それらの現れ方と各種の症状の現れ方から身体のゆがみや気の偏りの状態を把握し、背中や手足に鍼・灸を行い、冷えを解消することで、このゆがみ・偏りの状態を調整して症状の改善をはかります。
積聚の変化は患者さんにも実際に実感できる形で起こります(具体的には「痛みが消える」、「硬さが緩む」などです)ので、治療の結果、自分の身体が変化したという事を十分に実感していただけると思います。
積聚治療では、1ヶ所に鍼をするとその影響が全身に及ぶと考えますので、1ヶ所1ヶ所、鍼灸の身体への影響を確認しながら、次の治療点へと移って行きます。ですから数本の鍼を同時にまとめて刺すことはあまりしません。
1ヶ所の刺針で必要十分な変化が身体に起これば、それ以上身体に刺激を与える必要はありませんから、そこで治療を終了するということもありますが、実際には病が深くなっている方が多いので、背中に4〜5ヶ所、腕や足に2〜3ヶ所程、また必要に応じて腹部に1〜2ヶ所程の鍼を行う事が多いです。
なお、治療に入る前段階として、腹部・背部全体に「接触鍼」という針先を肌に触れさせるだけの施術を行います。腹部・背部全体に行いますので、鍼先を触れさせる場所は数十ヶ所に及びますが何ら苦痛は伴いませんし、1〜3分程度で終了する軽い施術です。
「刺鍼」とは「鍼を刺すこと」を意味しますが、積聚治療では積極的に鍼を刺し入れるということをしません。
皮膚に鍼の先端を触れさせ、皮膚の状態を診ながら鍼の弾力に任せて軽く押すという施術を行います。
この際、鍼が皮膚に刺さらなくとも治療の効果は十分にあります。むしろ過敏な患者さんの場合は、全く刺さない鍼で治療を行うこともあります。
これは、鍼を行う目的が、皮膚や筋肉を刺し貫いて刺激を与える事ではなく、身体の表層のもっとも動きやすい「気」を動かす事にあるからです。ですから必ずしも皮膚を切って体内へ刺し入れる必要性がないのです。
人体を構成している気は、表層ほど刺激に敏感で変化しやすい性質を持っていますので、このもっとも表層に刺激を与えることで、身体の浅い部分の気が動き出します。人体は、全身が一つの大きな気の固まりですので表層の気が動き出せば、その影響が徐々に深層の気にも伝わって行きます。
つまり、皮膚に鍼を当てることによって、表層に変化が生じ始めると、その変化が深部まで伝わるので深部へ直接鍼を刺し入れる必要がないのです。
また、ある一ヶ所の深い部分を鍼で刺し貫くよりも、表層の気を大きく動かす刺激の方が広い範囲に影響を及ぼす事ができるので、症状を起こしている部位全体に影響が行き渡り、結果として早期の症状緩和につながることになります。
お灸については、鍼による治療を行った後に、補助として行います。
お灸はもぐさをゴマ粒大に丸めて直接皮膚の上で燃やす透熱灸(点灸)を3壮〜10壮(壮=個)行います。部位は主に、背骨の上と手足の爪の端、かかとなどです。
背骨の上やかかとでは時に20壮以上行うことがあります(かかとについては冷えの強い方はなかなか熱さを感じない場合があります。その際は熱さを感じるまで行いますが、何十壮行っても熱さを感じるのは最後の1〜2壮だけです。)。
手足の爪の端は非常に敏感な部分なので、ここへは糸状灸と呼ばれる糸のように細く小さくまとめたもぐさを1〜2壮行います。
全て皮膚の上で直接点火しますので、一瞬チリッとした熱さがあり、直径1mmほどの茶色い灸点が残ります。どうしても我慢できない場合や、灸点を残したくないと希望される場合は、違う方法を採ります(基本的に多大な苦痛を伴う施術は行いません)。
また、灸頭鍼といって鍼の頭にもぐさをつけて燃やす方法や、知熱灸といって、大きなもぐさの固まりを皮膚の上で燃やし、熱を感じた段階で取り除くという特殊なお灸を行うことがあります。
身体の浅い部分に現れている症状から、一枚一枚病がはぎ取れるように治療が進みますので、最も気になる症状が最後まで残ったり、隠れていた別の症状が顔を出してくることなどもありますが、徐々に身体が良い方向へ変化していく事を実感していただけると思います。
鍼の感触、お灸の熱感、身体に感じる痛みの度合いなど、詳細にお話をうかがいながら治療を進めて行きますので、苦痛に耐える必要は一切ありません。
使用する器具
治療に用いる器具は、使い捨ての鍼ともぐさ(お灸)が主です。
他に特殊な物として吸角とパルスがあります。
鍼は長さ4cm・太さ0.2mmの銀製の物を主に使います。
他には長さ5cm・太さ0.2mmのステンレス製の物、また、長さ4cm・太さ0.16mmのステンレス製の物もたまに使います。
材質の違う鍼を用意しているのは、気を動かす操作には、粘りがあり人体に親和性の高い「銀鍼」が有効で、「ステンレス鍼」は主に鍼通電や灸頭鍼など、鍼に耐久性が求められる治療の時に使うためです。
その他に、過敏な方やお子さんには「てい鍼」と呼ばれる先端の丸くなった刺さない鍼を使うことがあります。また、皮内鍼といって、皮下に小さな鍼を入れて、テープで数日間固定しておく物を使うことがあります。
もぐさとはお灸につかう材料でよもぎから作られます。
燃焼時間の違いで、肌に直接行う点灸用の物と、灸頭鍼・知熱灸などの特殊なお灸に使用する物を用意しています。
また、煙と臭いのほとんど出ない炭化もぐさも用います。
吸角とは、ガラス製のカップで、当院ではこれにポンプをつないで使用するタイプの物を使っています。
これは鬱血を処理する為の器具で、循環が悪くなり鬱血を起こしている部位をこのガラスカップで、吸ってやることで皮下の鬱血を取りのぞく治療に使います。
意図的に内出血を起こさせるので1週間ほど丸いアザ状の物が残りますが、効果が高いので、たまに肩・背中・腰・膝の裏などで使うことがあります。
吸引されている感触はありますが、痛みはほとんどありません。
パルスと言うのは鍼通電を行うための装置です。
硬く凝り固まった筋肉をほぐしたり、持続的な刺激を与えて痛みを軽減させたりできる装置ですが、当院ではほとんど使いません。
治療時間について
患者さんによって個人差がありますが、治療時間は平均して45分〜60分程度です。
初診の場合は問診や検査なども加わりますし、治療法や器具などの説明にも時間を割くので、90分〜120分程度かかることがあります。
特に初診時はいろいろとお話をうかがわせて頂きますので、お時間に余裕を持たれてご来院下さい。
なお、当院では一ヶ所一ヶ所鍼の効果を確かめながら治療を進めて行きますので、上記の治療時間中は、お一人の患者さんにつきっきりとなってしまいます。
その為、治療が重なってしまった場合は待ち時間が長くなってしまう事がありますので、その点ご了承下さい。
*平成14年4月より「予約優先制」となりました。ご予約の患者さんを優先的に治療いたしますので、ご予約を頂いていない場合は、空き時間までお待ちいただくことになります。
治療スケジュールがある程度把握できるようになりましたので、事前にお電話でご確認頂ければ、ほとんど待たずに治療を受けていただけます。
治療間隔について
「治療を受ける」ということは、一見して疲労する行為ではありませんが、実際には治療の刺激を受け取る為に身体が力を使う行為ですので、当院では連続した治療はおすすめしていません。
また、深い冷えを短期間で取り去ることはなかなか難しいですし、強引な治療は返って身体を疲れさせてしまいますので、基本としては週に1〜2回の治療で根気よく治療を続けられることをおすすめしています。
なお、基礎的な体力が十分ある方や、症状が出てから日が浅いというような方の場合(気の充実度の比較的高い方、冷えの度合いがまだ浅い方)は、治療を受ける力も身体の持つ自然治癒力も旺盛ですので、数回の治療で主な症状がとれる場合があります。
ですが、平均的な治療期間は概ね3ヶ月程度が目安になるかと思います。
お勧めするパターンとしては、生活習慣の改善を行いながら週2回の治療を3〜4週程度続け、ある程度改善が見られたら、以後は週1回に治療間隔を広げ、様子を見ながら順に2週に1回、月に1回と間隔を明けていって、最終的にご相談の上で治療終了し、以後は体調を見て時折(季節の変わり目等)治療を受けるというパターンです。
ちょっともったいないケースとしては、週2回の治療を1ヶ月ほど行ってある程度良くなったところで、治療を中断してしまうケースです。表に出てきている主な症状が落ち着いても、まだ解消されていない深い冷えが残っている場合が多いので、3ヶ月後程に症状がぶり返して再来院という事もあります。
ですから、鍼灸治療は本来予防医学として働いてこそ真価を発揮する物ですので、主な症状がとれた後も健康管理の為に、月に1〜2回から数ヶ月に1回程度の定期的な治療をおすすめしています。
鍼灸は予防医学(未病を治す)
鍼灸は治療法として取りあげられる事が多いですが、本来は「未だ病にあらざる物を治す」というのが本道で、元々は予防医学なのです。
風邪は免疫力の低下や体力の低下によってかかりやすくなりますし、捻挫などの外傷も、一見すると不運なアクシデントととらえがちですが、普段なら捻挫などしないようなちょっとした外力で外傷を負ってしまった場合などは、全身的な冷えによって捻挫した部位の気力の充実度(密度)が弱くなっていた為に、きっかけになった外力に耐えられなかった結果という事が言えます。
「ちょっとつまずいただけで捻挫を起こした」というような例などは、捻挫を起こした足関節に力がなくなっていた事から、軽い外力で外傷に至ってしまったと言える例です。
このような、疲労・免疫力の低下などのまだ症状が出るほど強くない冷えの状態である「未病」を放置せず、未病の段階で身体のゆがみ・偏り(冷え)を調整する(解消する)治療をしておくと、その後大きな病に進展することを予防することができるのです。
予防の為には、時に鍼灸などで身体をメンテナンスしておく事が重要ですが、同時に「冷やさない生活習慣を身につける事」も重要です。
健康的な生活を送るために、是非「冷え習慣の改善」もご一読下さい。