具体的な鍼灸治療の流れ
積聚治療(しゃくじゅちりょう)は、浅い気の層から深い気の層へと、「段階を踏んで」治療を進めて行く治療法ですので、基本的な治療の流れは全ての患者さんで同一になります。
ですが、ツボの選択は、全身の状態、お腹の状態、脈の状態など複数の情報から判断を行いますし、鍼や灸の種類、刺激の量も必要に応じて変えますので、個人個人は全く違った治療内容になります。
ここでは、具体的な治療の流れをカンタンに説明します。
問診−初診時のみ−
予診票の記入
まず、「予診票」をご記入いただきます。
問診
予診票をもとに詳細にお話をうかがいます。
説明
治療の方針と簡単な治療法の説明、生活改善のアドバイスなどを行います。
仰向け(上向き)
問診−二回目以降−
詳細な問診は初診時のみですので、二回目からはベッドサイドで治療開始前に前回の治療後の変化、当日の体調など簡単な問診を行います。
場合によっては、次の腹部接触鍼を行いながらお話をうかがう場合もあります。
腹部接触鍼(第一段階)
まず、お腹全体に接触鍼(せっしょくしん)を行います。
これは身体の最も浅い気の層に行う、とても軽い刺激の鍼ですが、次に診る脈はもちろん、全身にも影響が及ぶ重要な治療です。
次に診る脈やお腹からノイズを取り去ってクリアーに観察できる状態を作るというイメージをしてもらうと分かりやすいかもしれません。
脉診、脈の調整(第二段階)
両手の手首の拍動部に触れて「脉診(みゃくしん)」を行います。
両手の脈を同時に観察し、脈の早さや浮き沈み強弱などの脈全体から全体的な元気の状態を推測し、片手3ヶ所×両手で6ヶ所ある脈の観察点から五臓六腑(ごぞうろっぷ)それぞれの気の様子を観察します。
次に、脉診の内容に従って、脈の調整の為に手・足のツボに鍼をします。
途中脉診を繰り返し、1〜2ヶ所鍼をすることで脈の調整を行います。
この第二段階までで、表層のもっとも動きやすい気の調整が終わります。ここまで治療すると、お腹には深い冷えの状態が比較的クリアーに現れるようになっています。
腹診(第三段階)
脈の調整が終わった後、腹部全体に触れて、硬さや冷たさ、動悸などを手がかりに痛みや異常感覚、コリなどの「積(しゃく)」の状態を調べます。
腹診の結果と、主な症状、全身の状態などから冷えの状態を判断し、治療の目標とする「積」を選びます。
うつ伏せ(下向き)
背部接触鍼
背中全体に接触鍼を行い、背中全体の浅い気を整えます。
背中への刺鍼(ししん)−基本治療の要−(第三段階)
腹診で決定した積を改善する為に、背中のツボへ鍼をします。
途中、腰や肩などの緊張状態や主な症状の変化などを確認しながら、1ヶ所ずつじっくり鍼を行い、十分に身体が変化するまで3〜5ヶ所ほど鍼をします。
この背中への治療が冷えを解消する治療全体の要になります。
補助治療
うつ伏せの姿勢で無ければ出来ない補助治療を行います。
主に、腰や背中(背骨の上)への透熱灸(とうねつきゅう)や知熱灸(ちねつきゅう)などのお灸がメインになります。
*補助治療:より一層気の巡りを円滑にする。
仰向け(上向き)
腹診
背中の鍼でどの程度冷えの状態が変わったか、もう一度腹診をして変化の状態を確認します。
手足へ刺鍼(第四段階)
腹診で現れているより深い冷えの状態を改善する為に、肘から先、膝から先に集中しているツボへ鍼をします。
お腹の状態を確認しながら1〜3ヶ所程度行います。
お腹への刺鍼(第五段階)
手足に鍼をしてもなかなかお腹の状態が良くならない場合には、さらに肋骨の際や、へその周辺などお腹にあるツボにも鍼をします。
補助治療(第六段階)
手足やお腹への透熱灸や温灸(棒灸)など、仰向けの姿勢で出来る補助治療をします。
最終的な脉診
最後に全身のバランスが崩れていないか確認するための脉診を行います。
脈が乱れている場合は、手足に鍼またはお灸を行って整えます。
座った姿勢(ベッドに腰掛ける)
補助治療
必要に応じて、座った姿勢での補助治療を行います。
全身の観察
身体を起こした状態での身体を観察し、変化の状況を確認します。必要に応じて軽い補助治療を加えて終了します。