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Card-03「美容鍼灸は小顔をつくれるのか?」
“美容鍼で小顔に!”はニセ医学?
先日、Facebookで2015年3月に書かれたこちらのブログ記事がちょっと話題になりました。
美容鍼で小顔に!!効果と理論が全く意味不明?!真面目な鍼灸師さんもいるのに残念。ニセ医学はここまで来ている。(五本木クリニック院長ブログ)
そこで、このブログから読み取れる美容形成外科医の先生の見解から、美容鍼灸に実際に期待出来るところがどんなところか?どんな方に美容鍼灸は向いているのか?を考えてみたいと思います。
まず始めに、私はこの形成外科の先生が仰っている事は、概ね正しい見解だと思います。
リンク先を読んで頂ければ良いんですが、ざっと簡単にまとめると、
(美容鍼灸を提供している鍼灸院のサイトなどでは)
「ツボを刺激して血流が良くなり美肌効果が。」
「老廃物や余分な水を美容鍼で刺激して小顔になる。」
という説明を見かける。ツボに鍼を刺すと血行が良くなるのは実証されている
→ツボを刺激して血流が改善すれば、顔色が改善して美肌になるという表現は頭から否定できない。「老廃物や余分な水を美容鍼で刺激して小顔になる。」という表現は医学的に理解不能。
老廃物とは何か?
医学的には老廃物が出て行く経路は“尿・便・汗・呼気”しかない。美容鍼で小顔になるとはむくみが取れているだけなんじゃないのか?
美容鍼で小顔になるためには、
1,余分な脂肪が除去される
2,表情筋が引き上げられフェイスラインが整う
3,咬筋が緩み、いわゆる「エラが張った状態」が解消されるなどの効果があって初めて「美容鍼で小顔に」と言えるのではないか?
ここから大事なところなので、敢えて要約せずにブログからそのまま引用します。
1の美容鍼で脂肪が減少する、というのはどう考えても有りえないですよね。一部の美容鍼サイトでは、血行が良くなり新陳代謝が促進されて、脂肪などの老廃物(また出ましたね)が排出されやすくなるので、小顔になる、という説明されています。 風が吹けば桶屋が儲かる的思考回路としては、この理論は成り立ちます。でも、ほとんどの美容鍼の紹介では「即効性」「その場で効果を実感」という表現が使用されています。美容鍼で小顔になるのは、脂肪がなくなる為という説明は怪しいものになります。
2の表情筋が引き上げられて小顔効果ですが、一見有り得ないようで、これは顔の筋肉である表情筋の複雑さを考えに入れると有り得ないワケではありません。前頭部を丹念にマッサージすると引きつっていた前頭筋が緩み、引っ張り合っていた眼輪筋・上眼瞼挙筋・皺眉筋のバランスが崩れ(通常、これらの筋肉はお互いに引っ張り合っている)、重く垂れ下がった瞼が一時的に上がって見えます。
3のエラが張った状態を解消して、小顔に見せる効果、鍼には強張った筋肉を緩める効果があるので、有り得ないことではないです。しかし、美容鍼が咬筋を緩めたとしても、持続時間は長くて数時間しかありません。
以上から、美容鍼による小顔効果は全くないわけではないけど、持続時間に問題あり、という結論になります。
という感じで、完全にニセ医学であると否定されている訳ではなく、鍼が刺される事による血流の改善効果や筋肉の緊張を緩める効果なども認めて下さった上で…
“表情筋のバランス変化”“咬筋の緊張緩和”それと“血流の改善”
は起こるだろうとして、そこから考えられる効果はあってしかり、
ただ…
“脂肪の除去効果”は少なくとも短期間に効果が出るという説明とは相容れず考えられないだろう
ということと、
筋肉へのアプローチである以上短時間で効果が無くなるのではないか?
ということから、“持続時間に難あり”という結論をだされているのかと思います。
美容鍼灸で何ができるのか?
次に、この形成外科の先生の結論を受けて、当院で実際に美容鍼灸を行っている患者さんの経過から、実際のところ美容鍼灸では何ができているのか?を考察してみようと思います。
その為に、あえて美容形成の先生が示された“小顔になるための条件”に添って考察してみます。
美容鍼で小顔になるためには、
1,余分な脂肪が除去される
2,表情筋が引き上げられフェイスラインが整う
3,咬筋が緩み、いわゆる「エラが張った状態」が解消されるなどの効果があって初めて「美容鍼で小顔に」と言えるのではないか?
1,余分な脂肪が除去される
鍼灸により脂肪が除去される効果はありません。
神経痛の治療などで、長期間腕や脚に鍼を刺して電気を通す治療をしていると、手足が細くなるという経験をされている先生は多くいらっしゃるので、刺激をすることで局所的な脂肪が取れていく可能性もゼロではないですが、少なくとも“顔の脂肪を鍼を使って落とす(除去する)”というのは難しいと思います。
過去、ウエストの脂肪を鍼通電で減少させられないか?という試験をされて学会発表されていた先生がおられましたが、その試験の範囲では顕著な変化も見られず、その後続報もありません。
ただし“むくみ”については非常によくとれます。
全身治療(当院の場合は積聚治療)で全身の血行を改善・確保した状態で、顔を美容鍼で刺激して、さらにリンパドレナージも行いますので、非常に良く抜けてくれる印象です。
当院では、必ず施術前後の顔写真を撮影して、術後に患者さんに見て頂くようにしていますが、ある程度通院されて、ほとんど変化が出なくなっている方でも、当日のむくみの改善だけは顕著に表れる方が多いです。
<30代>施術前→施術後
顔全体のむくみがとれ、全体にボリュームが下がっています。
つまり、溜まっている“脂肪”は除去されませんが、溜まっている“水”なら抜けますので、むくんで顔が丸くなっている方については比較的短期的な改善が見込めるのではないかと思います。
2,表情筋が引き上げられフェイスラインが整う
当院が指導を受けた美容鍼の考え方では、側頭筋がフェイスラインを引き上げていると考えますので、必ず側頭部に3本程度、頬が良く動く部分を狙って鍼を入れます。
そこから、目の周り、法令線のあたり、輪郭、咬筋の辺りなどに、引き上げのテンションを掛けつつ鍼を入れていきます。
15分〜20分程度鍼を入れたままにしておき、抜きながらリンパドレナージを行いますので、頭皮全体を動かすような手技も入りますし、頚部の緊張緩和の為の鍼治療も行いますので、後頚部の緊張の緩和から前頭部へ掛けての頭部全体の筋緊張が緩和されます。
このことから、表情筋の偏った緊張が取れ、全体のバランスが整理されて、結果的に“整った顔立ち”になっていく印象があります。
過去の例でも、数ヶ月継続治療をされた方が、初診時のお写真と継続後のお写真を見比べながら、輪郭の中の目鼻の位置が「収まるところに収まっている印象」があると仰られた方が少なからずおられました。
確かに、形成外科の先生が仰られるように、あくまでも筋肉の緊張緩和からくる筋力の回復によってリフトアップを行いますので、1回の施術で得られるリフトアップの効果は長くて3日程度です。日常のお仕事のストレス等によってまた疲労は溜まりますので、どうしてもまた下がってきてしまいます。
ですが、前述の通り、継続することで筋肉の過度の緊張が取れるのか、はたまたストレスの軽減から噛みしめなどが減るからか、初診時からみれば数ヶ月後のお顔の方が、施術をしていない状態でも比較的たるみが少なく肌の色つやも良い状態になって来ます。
1回のそれも“顔の筋肉にのみ行う鍼”ならば、形成外科の先生が仰られるように「短期間で効果が消えてしまう“持続性に難のあるもの”」なんでしょうが、継続して全身丸ごと改善していくと、表情筋も含めて“緊張の仕方そのもの”が変わってきますので、結果的に初診時と比較するとよりたるみの少ない血色の良いお顔になっている事が多いです。
平成22年3月から同年7月に掛けての変化
3,咬筋が緩み、いわゆる「エラが張った状態」が解消される
2の中でも既に書いていますが、当院の美容鍼灸では“咬筋”にも鍼を刺します。それも、咬筋の緊張によるエラが張った状態が解消される事を期待して鍼を行います。
また、これは美容鍼灸として行うものではなく、頚部の緊張緩和の為に行う処置ですが、顎関節周辺、側頚部・後頚部の深部の筋肉の緊張緩和の鍼も治療の一環として行います。
全身治療での胃腸の状態の改善、ストレスの緩和、顎周辺の緊張の緩和、これらが合わさっていくことで、無意識での“噛みしめ”や歯ぎしりなども減り、結果的に咬筋が緊張しにくい状態になっていきます。
これも、1回の施術では、一時的に咬筋の緊張が緩むだけですが、継続することでそもそも咬筋が緊張しづらい状態になっていきますので、結果的にエラの張りが減っていきます。
まとめ
これらの事から、ある程度治療を継続することで、頭部・頚部全体の緊張の緩和、胃腸の状態の改善、ストレスの緩和などから、むくみが出にくくなり、表情筋が柔軟になってたるみにくくなり、咬筋や顎周辺の筋肉が緊張しづらくなることでエラが張らず、輪郭も整っていく傾向があります。
その結果として、小顔に感じる程度にフェイスラインも整い、むくみが取れて顔のボリュームが下がるという事は言えると思います。
美容鍼灸の特徴としては、薬品を使わず(優れた非薬物療法)、皮下に異物を埋没することもメスで切開することもなく、全身的な症状を改善しながら美容効果を得られることかと思います。
どんな方に美容鍼灸がお薦めか?
・エステのリフトアップ、小顔施術に今ひとつ満足ができなくなってきた。
・美容形成で顔にメスを入れたり異物を入れたりすることには抵抗がある。
・顔の衰えも気になりだしたが、身体の不調もあれこれ気になる。
という方にお薦めです。
エステのリフトアップ、小顔施術に今ひとつ満足ができなくなってきた。
エステで行われる美容施術は、基本的には皮膚の角質層から表層への刺激がほとんどで、真皮層へ届く施術はなかなか行えません。
一部のマシンなどでは真皮層までの刺激が届くというような事も言われていますが、医療行為でもないエステという場所では、積極的に皮下の組織を破壊したり侵襲したりする施術は行えません。
ひるがえって、鍼灸であれば、皮膚も真皮層まで刺激することが可能な上、筋層にも十分な刺激を行う事ができます。
また、真皮層に微細な傷を付けることで、線維芽細胞が活性化されてコラーゲンやエラスチンの産生が活発になり、肌の弾力が増すとも言われています。
エステも良いけど、もうちょっと深いところまで刺激を入れて変化させて行きたいな〜という方はトライされてみても良いんじゃ無いかと思います。
美容形成で顔にメスを入れたり異物を入れたりすることには抵抗がある。
形成外科(俗に言う美容整形)で、溶ける糸を入れたり、頭にチタンのボルトを入れて糸を通して頬を引っ張り上げたりすると、1回の施術でググっと顔が変化する事は解っているけど、「やっぱり顔にメスを入れるとか異物を入れるってことには抵抗がある」という方は、まずリスクの少ない美容鍼灸を試されてみてはいかがでしょうか?
薬物も使わず、肌に異物を埋没することもせず、メスできることもなく、また比較的“安価”に真皮層・筋層まで届く施術を行うことができます。
費用という点を見ると、上記のブログの先生のところでは、記事内でお薦めされている“ハッピーリフト”という施術が、1本32,400円だそうです。
サイトの写真から、左右5本づつ合計10本は入れるということもあるようですので、サンプルの患者さんでざっと324,000円は掛かってるんでしょうか。手術室を準備して、スタッフも揃えて…という事を考えると、比較的良心的な価格かと思います。
ひるがえって当院の美容鍼灸は、全身治療もセットで1回8,000円です。毎週通っても月4回で32,000円。平均的な患者さんは大体2週に1回で月2回の方が多いので、月2回で1年間通ったら28回で192,000円です。
一概に比較するべきものではありませんが、費用にはこのくらいのボリューム差があります。
ちなみに、患者さんによっては、月2回のうち1回は全身治療(5,000円)1回は美容鍼灸(8,000円)というパターンを踏まれる方もおられます。
顔の衰えも気になりだしたが、身体の不調もあれこれ気になる。
当院の美容鍼灸は、原則として“全身治療(積聚治療)+顔の鍼”の組み合わせで行います。
その為、美容鍼灸を受けに来られる方は、自動的に全身治療によって身体にあれこれとと出ている不調もまとめて一気に診させて頂きます。
それにより、美容鍼灸で通院されつつ、「胃の調子が良くなって食事ができる様になってきた」とか「頸肩が楽になってきた」「五十肩で上がらなかった腕があがるようになった」という、当たり前に鍼灸院で改善されていく症状も一緒に改善されていってます。
当院では、“顔の衰え”も“身体の不調”も、根っこは同じ“身体の冷え(精気の虚)”が原因と考えます。
その為、治療を行うに際しても、身体だからお顔だからという境界線はなく、全て基本的な治療は共通して行います。逆に言えば、美容鍼灸は通常の治療の補助治療としてお顔の刺激を行っているだけですので、当然身体の不調も一緒に改善されていきます。
“仕事の帰りに整体やもみほぐしで肩揉んでもらってた”、“休日にはエステに通ってた”という方は、当院の美容鍼灸なら全部まとめる事ができます。
全身的な血行の改善、胃腸の血流改善から消化吸収の適正化と排便・排尿の適正化、頸から腰を始め全身の筋肉の緊張の緩和(肩こり・腰痛の改善)、関節の痛みの軽減、さらに女性なら月経の安定化・月経痛の減少、MPSなどの改善から不妊・安産に到るまで、もろもろ身体の不調を解消しつつ、それを背景としたお顔の美容的なお悩みの解消をしていく、それが鍼灸による美容です。
結語
“美容鍼灸は小顔をつくれるのか?”ということの結論は、“むくみによって膨らんでいる方”、“筋肉の緊張によってエラが張ったりたるんだりしている方”のお顔は、フェイスラインを整えてむくみを解消することで、さっぱりとさせていくことが可能です。
ただし、脂肪がついて膨らんでいる方については、申し訳ありませんが全身的に脂肪を落とすように努力して頂かねば鍼灸のみで顔を小さくしていくことは難しいです(むくんでいる部分については短期的に解消されますが…)
鍼灸による美容の特徴は、“薬物を使わず、異物の埋設や切開などを行わず、全身的な症状の改善を行いつつ健康的な美しさを実現する”という事だと思います。
それは、“あこがれのあの顔になりたい”とか、“あと◯センチ顔を小さくしたい”というご希望には添えないかも知れませんが、“誰の目からみても、元気で輝いてみえる、整ったお顔立ち”を目指していくことはできると思います。
つまり、自分自身の持っているポテンシャルを最大限に引き出す為の施術であって、自分を削って変えていく物ではないということです。
この点をご理解頂けますと、美容鍼灸に対して期待できることと期待出来ない事がお解り頂け、ミスマッチも起こり難くなるかと思います。
また、費用的な側面から考えた場合、“1万円足らずで、身体の不調を整えつつ、具体的には肩こりとかの治療もしつつ、3日程むくみもとれてシャキッとリフトアップして顔がスッキリする施術”と考えたら、費用対効果は悪くないですし、使い方もありますよね。
メスを入れるでなく、高額な治療費もかかるわけじゃなく、身体の不調も整って、顔もスッキリ。しかも数日ならリフトアップもできるなら、免許証の書き換えの前にちょこっと通ったり、ブライダルエステ感覚で通ったり(同時に妊活もできちゃってお得!)って使い方を比較的気軽にできます。
“整形手術程の覚悟は要らず、エステと違って真皮層にもしっかりアプローチできる”そういう風な見方もできるかも知れません。
あなたの中に埋もれてしまっている美しさを、鍼灸の力で掘り出してみませんか?
健康管理も兼ねて、是非美容鍼灸を皆様のこれからの人生にお役立て頂けたらと思います。
※参考:
美容鍼灸のモニターさんがご自分のブログに感想を書いて下さっているので、以下に紹介します。
日々是好日:美容鍼灸レポ!
http://yunmamablog.seesaa.net/article/147863259.html